島内に敵なし 樹上の王フォッサ

2020年01月30日

島内に敵なし 樹上の王フォッサ

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Photo by - Rod Waddington - Fossa, Kirindy, Madagascar
マダガスカル島には「進化途中の動物」が数多く暮らします。フォッサもその例に漏れません。遺伝的に近しい動物を並べると、あまりに異質な存在なのです。獰猛どうもうな性格はとりわけ印象的。食物連鎖の頂点に立つ恐ろしい存在です。メスの立場がオスより強いこともまた珍しい。ではマダガスカル島の育てた異端児を探りましょうか。



マングース界の異端児

今回の舞台は、アフリカ大陸の南東にある島国−マダガスカル島です。6500万年前にはアフリカ大陸から分離し、島国として存在していたといいます。周りを海に囲まれるため、大陸の動物が渡ってくることはできません。そのため、この地に住まう動物たちは、独特な進化を続けました。珍妙な動物たちの王国。それがマダガスカル島なのです。

マダガスカル島の面白いところは、極端な地域環境の差にあります。東側はジャングルが生い茂るというのに、中央から西側にかけては、乾いた砂地が延々と続くのです。これは、島の中央部が高山地帯となっていることが原因。東側から吹いた風が山々に跳ね返されるため、東側にしか雨が降らないのです。結果、降雨量が東側へ集中し、かたやジャングル、かたや荒れ地という極端な差が生じました。



さて、フォッサはマダガスカル島の東側−ジャングルに暮らしています。木から木へ飛び移り、樹上から獲物を探すハンター生活を送るのです。鼻先にイヌっぽさを感じるものの、見た目だけならネコに見えますね。しかしフォッサは分類上、イヌでもネコでもありません。マングースの仲間−ジャコウネコに分類されています。

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Photo by - lasta29 - Dwarf mongoose, Osaka Tennoji Zoo
マングースはこちら。フォッサとはまるで似ていません

香水と聞いてピンとくるでしょうか?ジャコウネコ科の動物は独特なニオイを発することができます。このニオイを用いて、なわばりを主張したり、異性へアピールしたりするのです。

フォッサにもこの習性が備わっています。胸とお尻にニオイ腺を持っていて、これを岩や木にこすりつけてニオイを残すのです。このニオイでなわばりを主張すれば、獲物の多い土地を独り占めできる、という寸法ですね。フォッサは1日2〜5km歩き回り、狩りとなわばり維持に努めます。

ジャコウネコに近縁な動物として、ハイエナを挙げることができます。群れを成してサバンナを生き抜く、どこかイヌを思わせる動物ですね。一方、フォッサは単独生活が基本で、前に挙げた通りネコを思わせる姿をしています。同じジャコウネコだというのに、こうも違うとは・・・。やはりマダガスカル島は、珍妙な動物を生み出す土地なのでしょうね。



マダガスカル王者 樹上を征す

フォッサの筋肉質な手足と細身のからだは、どこかピューマを思わせます。ピューマは北アメリカに暮らす巨大ネコ。食物連鎖の頂点に君臨するアメリカ王者です。フォッサもまた、マダガスカル島を支配する王者。ネズミからイノシシまで何でもエサにするため、あらゆる生物に恐れられています。

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Photo by - zoofanatic - Fossa eating lunch
筋肉質な腕。掴んで離さないツメ。鋭いキバ。獰猛さをうかがえます

フォッサは生活スタイルに頓着しません。昼も夜も活動し、あらゆる動物をエサとします。マダガスカル島に暮らす動物はすべて、フォッサのエサとなり得るわけです。そのことを称して、フォッサはキーストーン種(生態系へ多大な影響を与える生物)へ認定されていますね。

フォッサがとりわけ好むのがキツネザルです。フォッサの食性調査によると、エサの94%を脊椎動物が占め、中でもキツネザルは50%を超えたといいます。後にはテンレック(口のとんがったネズミ)9%、トカゲ9%、鳥類2%と続きます。キツネザルは木々の合間を縫って移動する動物。捕まえるには骨が折れる相手なのですが・・・?

実はフォッサもまた木登りの達人。ツメを枝に突き立てて、一気に駆け上がることができます。長い尻尾でバランスをとれば、枝から枝へのジャンプで落ちる心配はありません。もし滑り落ちたとしても、強力な両腕で枝にしがみつけば事なきを得られます。フォッサが樹上で見せる移動能力は、霊長類にも劣らないのです。となれば、樹上でよく出くわすキツネザルを好んでエサとするのも、うなずける話ですね。


Movie by - BBC Earth - Sifaka Lemurs Jumping Around | Attenborough | BBC Earth
中盤からのケンカは見物。樹上でも地上と大差ない動きを見せます



メスの戦略 オスに化けて優位に立つ

フォッサには極めて珍しい特性が備わっています。メスがオスへ化けるのです。メスのフォッサは、1〜2歳になると男性ホルモンを急増させ、本来オスにしかない、ペニスのようなものが備わります。中身は脂肪の塊なので、機能は一切ありません。ただ、見た目は完全にオスそのもの。性格もかなり攻撃的になります。

メスはなぜ性別を偽るのでしょうか?これには諸説ありますね。たとえば、「繁殖準備が完了するまで、オスを追い払う目的がある」という説。性成熟が完了していないのにオスから迫られても、メスは子を成せません。からだの負担が増すばかりで、デメリットしかないわけです。メスは繁殖時期を自分で決定するためにも、オスと同等の力を身につけたかった。そのために男性ホルモンを高めるように進化を遂げた、という流れですね。

実際にフォッサは、メスがオスよりも強い立場にあります。というのもメスは複数のオスを集め、逆ハーレムを築くのです。メスはニオイでオスを誘いつつ、樹上でジッと出会いを待ちます。すると複数のオスが一ヶ所へ集まり、メスにアプローチをはじめます。集まるオスの数は最大で8匹。メスの気を惹こうと大声を上げ、オス同士ケンカして実力を示すのです。

ただし決定権はメスにあり。おまけにオス1頭だけを選ぶとは限りません。複数のオスと交わることも珍しくないのです。オス達はそれを知っているため、メスが交尾をする間、順番を待つようにその場で待機し続けます。フォッサは交尾時間がとても長い動物。最大で14時間もかかります。忍耐力も要求されるとは・・・男はツライ。1週間かけて複数のオスと交わったメスは、やがて姿を消します。その後、別のメスが訪れ、ふたたびオス達はアプローチをはじめる−メス主導で繁殖が続くのです。

動物界では、メスがオスより強い立場にあるのは珍しいこと。他の動物ではブチハイエナくらいなものです。・・・そういえば、フォッサもハイエナも、ジャコウネコの仲間でしたね。もしかすると、マダガスカル島がまだアフリカ大陸とつながっていた時代では、フォッサとハイエナは同じ動物だったのかもしれません。進化の不思議を、そしてロマンを感じてしまいます。
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