機能美を求めて 耳はためかせジャックウサギ

2020年01月28日

機能美を求めて 耳はためかせジャックウサギ

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Photo by - Scott Rheam, USFWS
ウサギは耳が長い動物。その特徴を極限まで求めたのがジャックウサギです。高温地帯の動物は耳が巨大化する傾向にありますから、ジャックウサギもそれに倣ったのでしょう。ただ大きいだけではありません。聴覚強化、温度管理、走行補助・・・生存に欠かせない機能を発揮します。機能美すら感じる巨大耳。これを持つジャックウサギに迫りましょう。



人気者はロバの耳

今でこそ、北アメリカでウサギの代名詞となっているジャックウサギ。実はその存在が知られるようになったのは、小説がキッカケでした。世界的な冒険小説『トム・ソーヤの冒険』を生み出した、マーク・トウェイン氏が名付け親。ある作中で、ジャッカスウサギ(jackass rabbit)という名で登場させたのです。ジャッカスとはロバのこと。なるほど。ウサギの中でも異様に大きな耳をしているのだと、上手く伝わってきますね。さらに作中の後半では、ジャッカスをジャックと略すようになります。世間には略称のほうが好まれ、今現代もジャックウサギ(jack rabbit)として親しまれるようになったわけです。

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Photo by - pxfuel
これがロバの耳。たしかにジャックウサギの耳と似てるかも?

ジャックウサギの耳は最大で17cmに達します。ちなみにペットでおなじみのカイウサギは8cm。倍ですね。ジャックウサギがこれほど大きな耳を持つようになったのは、高温地帯で暮らすことが影響しています。

ウサギは耳で体温調整する動物です。分厚い毛皮に覆われる以上、汗をかいて体温を下げることはできません。犬のように「ヘッヘッヘッ」とあえぎ呼吸をすることもありません。となると、皮膚の薄い耳から熱を放出するしかないわけです。ウサギは高温下に置かれると、血液が外気温の影響を受けやすくなるよう、耳の血管を広げます。

「外は暑いのだから、むしろ血液は温まるのでは?」という疑問もあるでしょう。たしかに、ジッとしていれば血液は温まる一方です。が、ウサギは積極的に走り回る動物。大きな耳は空気抵抗を受けやすく、いつも風に吹かれているような状態となります。つまり、耳へ冷たい空気を浴びせ続けられる−走りながら身体を冷やせるのです。



notウサギ butノウサギ

「ウサギ」と「ノウサギ」の違いをご存じでしょうか。近しい存在ではあるのですが、実は遺伝的には別物。染色体(DNAの集合体)の数が異なるのです。ウサギは44本、ノウサギは48本。ちなみに人間は丁度その間で、46本の染色体を持っています。覚えやすいですね。

暮らしかたも全然違います。「穴ウサギ」「野ウサギ」と言い換えれば分かりやすいでしょうか。ウサギは穴を掘って巣をつくり、積極的に外へ出かけようとはしません。外敵と出遭う機会が減るので、周囲の状況をそこそこ把握できる、そこそこ長い耳を持つにとどまっています。

一方、ノウサギは野を駆け回り、巣を持ちません。まれに巣穴で休憩をとるノウサギも見られますが、それは他の動物が掘った穴を利用しているだけ。自分で穴を掘ることはないのです。天敵と出遭う機会が増えるので、危険を察する能力、逃げ延びる能力が問われます。そのため、耳を大きく、四肢を長く・・・ウサギより大きなからだへと進化を重ねてきました。

ジャックウサギはノウサギの特徴を特に色濃く受け継いでいます。北アメリカでもっとも大きなウサギですし、運動能力も頭一つ抜けています。1回で3m跳躍し、時速にして64qもの走りが可能。長い耳がバランサーの役割を果たすので、方向転換も容易−ジグザグ走行で外敵を翻弄します。チーターが尻尾をブンブン振り回して方向転換するように、ジャックウサギは耳を傾けて体重移動をするわけですね。

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Photo by - Larry Lamsa - Jackrabbit
耳のみならず。足の長さも特徴的。



喰われども・・・ 増えよ肥えよ

悲しいかな。速さに優れるジャックウサギも、持久力には不安が残ります。さらには反撃する術を持たないため、実に多くの動物が襲いかかってきます。特に厄介なのが、タカをはじめとする鳥類でしょう。空中からじっくり観察してくるため、ジグザグ走行に引っかかってくれません。短期逃亡に失敗してしまえば、疲れたところを捉えられてしまうわけですね。走行能力は決して低くないのですが、他のウサギ同様、ジャックウサギも大多数が肉食獣の犠牲となってしまいます。

喰われる以上、増えなければ絶滅してしまいます。そこでジャックウサギはすぐに成長し、積極的に繁殖を行うように進化しました。オスは生後7か月で性成熟を迎え、メスは生後2年目の春には繁殖を始めます。ユタ州に住まうジャックウサギは1〜7月まで繁殖可能で、実に75%のメスが妊娠を経験するとのこと。繁殖への意欲が伝わってきますよね。オス達もオス達で、メスを巡ってケンカを繰り返します。ちなみに彼らはいたって真面目なのですが・・・傍目にはとても愛らしく、おもわず笑みをこぼすこと間違いなし。ぜひ見てほしいですね。


Movie by - Pachuco'sArt/The Desert Whisperer - Antelope jackrabbits fighting



ノウサギには穴を掘る習慣がありません。ジャックウサギもまた、巣穴と呼べるほど立派な寝床は用意しません。地面を数センチだけ掘り、落ち葉を敷き詰める程度。そこで最大6匹の子供を産み、わずか2週間の子育てに勤しみます。子供は完全に目が開いている状態で生まれ、数分で歩けるようになります。母親はほとんど世話をしてくれません。2週間で餌を探し始め、1ヶ月後には自力で生活できるよう、成長を促されるのです。

草、葉、低木・・・すべて植物を食い尽くす勢いで、ジャックウサギは食べ続けます。地域によっては木の皮やサボテンを食べる姿も。硬い植物を消化するためには、強い胃腸が求められます。ジャックウサギは植物の硬い繊維を攻略するために、盲腸を発達させる道を選びました。結果、どの器官より巨大な盲腸が完成したのです。その大きさは実に胃の10倍、左腹部のほぼすべてを占めています。盲腸内にはたくさんの細菌が暮らします。これら細菌の役割は、植物を発酵させること。植物の繊維質を破壊し、消化しやすいカタチへ変えてくれるわけですね。

盲腸で処理された植物は、やがて盲腸便として排泄されます。ウサギの糞は通常、硬くて丸いカタチをしています。それに対して盲腸便は、べちゃべちゃの下痢状。盲腸便はビタミン、タンパク質を豊富に含んでいて、もう一度食べることで栄養を得られます。つまりウサギは二度食い前提の、消化しやすい−べちゃべちゃの糞を排泄するわけです。盲腸で消化しきれないほど荒い繊維は、そのまま胃腸を通り抜け、コロコロした糞として排出されます。2種類の糞を使いわければ栄養効率UP。成長と繁殖は加速するばかりです。
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