クマを捨てた?ナマケモノになりたいナマケグマ

2020年01月07日

クマを捨てた?ナマケモノになりたいナマケグマ

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Photo by - Wildfaces - Sloth-bear
インドの森林地帯でゆったり暮らすナマケグマ。見た目はクマそのものですが、見せる特徴はクマらしからぬものばかり。怠けた生活を送ってきたせいか、他のクマとはまるで違う方向へ進化を果たしたようです。



クマらしからぬクマ

ナマケグマの英語名は「Sloth bear」。Slothは動物のナマケモノを指す言葉です。カギ爪を木に引っかけて、ぶら下がっている姿がナマケモノそっくりなことから、この名を付けられました。全体的に動作がゆるやかで、クマの獰猛なイメージが湧かないことも、この名が馴染んだ理由でしょう。

「honey bear」と呼ばれるほどハチミツ好きなことも、クマらしからぬクマたる所以です。ハチの巣を見つけると、そこらに転がっている木片を投げつけて地上に落とします。そして地上でゆっくりハチミツを楽しむのです。

もちろんハチも黙っていません。ナマケグマへ容赦なく襲い掛かるでしょう。しかしナマケグマは通常のクマにくらべ、かなり分厚い毛皮を着こんでいます。耳まで長い毛で覆われるクマは、ナマケグマくらいのもの。ハチに刺されようとも平気な顔でハチミツを食べ続けます。

実は「ハチミツを愛するクマ」というのは、空想の産物でした。実際のクマは、ハチに刺されることを恐れ、ハチの巣へ近づくことはありません。たしかにハチの巣を襲うこともあるのですが、それは冬眠を控えたクマに限ります。しかも目的はハチミツではなくハチノコ。タンパク質と脂質が豊富なハチノコを食べ、冬を越せるだけのエネルギーを蓄える目的なのです。「クマはハチミツ好き」が通用するのは、ナマケグマだけ。意外な事実ですよね。



クマを捨てナマケモノへ

ハチミツ以外にも、マンゴーやイチジクなど甘いものを愛するナマケグマ。ですが彼らの主食はなんと”アリ”。昼間はハナを地面にこすりつけ、フゴフゴとニオイを嗅いでアリを探し求めます。嗅覚にとても優れ、地下3メートルに潜むニオイも逃しません。アリの巣やアリ塚を発見すると、湾曲したカギ爪で穴を開け、そこから吸うようにアリを食べ始めます。ナマケグマの吸引力はかなりのもの。激しい吸引音は、180m離れた先にも響き渡ります。

アリを食べる動物と聞くとアリクイを思い浮かべてしまいますね。それは偶然ではないようです。ナマケグマとアリクイは共通点が妙に多いのです。アリの巣に穴を開けやすいよう、湾曲した爪を持つこと。そのせいで歩くのが苦手ということ。幼少期には爪を引っかけて木登りすること。母親が子供を背負って運ぶという習性も、クマとしては稀な行動ですが、アリクイでは普通のことです。

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Photo by - Samadkottur - Indian_Sloth_Bear_with_cubs
子を背に乗せる母熊。ナマケグマにしか見られない貴重な光景です。

食事をアリに頼るには、身体が大きすぎることも共通点でしょう。エネルギーを節約するために、ゆっくり動く−ナマケモノ生活を送っている点も・・・。挙げればキリがありませんね。

アリクイは実際、ナマケモノに近い種の動物なのですが、ナマケグマは間違いなくクマを祖先とする動物です。どうやらナマケグマ、甘いものやアリを食べる生活を送るために、クマであることを捨ててナマケモノ化してしまったようです。

ちなみに、まったく異なる種の動物が、似た特徴を持つように進化することを、収斂しゅうれん進化といいます。アリクイとナマケグマ。この2種は収斂進化の見事な例となるでしょう。



やっぱりクマでした 狂暴さは健在

ツキノワグマと同サイズ−2m近くまで成長するだけあって、ナマケグマが天敵に襲われる心配はありません。とはいえ幼少期はそうもいかず。トラ、ヒョウ、別種のクマ・・・自分より大きな肉食獣が脅威となるのです。そこでナマケグマの子供は木に登り、天敵をやり過ごそうとします。そして子供が木に登っている間、母親が敵の相手するのです。

ナマケグマはクマらしからぬクマ。のはずなのですが、敵を発見すると突然クマらしさを取り戻し、狂暴な一面をさらけ出します。巨大な身体は見掛け倒しではありません。時には、襲い掛かってきたトラを返り討ちにして、死に追いやるのですから。

むしろ狂暴すぎる性格をしています。通常のクマであれば、敵と対峙したとき、まずは様子見から入るはずです。にらみ合いが続き、相手が立ち去りそうにないと判断して、はじめて攻撃に移るのです。ところがナマケグマは、最初から攻撃一辺倒。敵の姿を見た途端、嬉々として闘いを仕掛けます。

その凶暴さゆえに、人間が襲われることも珍しくありません。1989年4月から1994年3月の間で、ナマケグマによる被害者が700人を超えたとの報告も残っています。致命傷を負った人も50人ほど・・・。人間より速く走れますし、猟銃で威嚇してもまったく怯みません。出会ったが最後、相手が動かなくなるまで攻撃を繰り返す、恐ろしい猛獣です。

「普段大人しいヤツほどキレた時が怖い」ということでしょうか。ナマケグマもやはりクマ。おどけた名前をしていても、自然下では絶対に出会ってはいけない動物なのです。
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