ネズミのようでサルみたい 人間味を見せてくれるツパイ

2019年12月18日

ネズミのようでサルみたい 人間味を見せてくれるツパイ

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見た目はリス。中身はサル。ツパイはこの2種を混ぜ合わせたような、不思議な存在です。食への探求心が旺盛、とてもキレイ好き・・・どことなく人間臭さを感じる一面も。小さな隣人の生活を覗いてみませんか?





・人間に次ぐ美食家

ツパイは食の探求心がとても強く、他の動物にはない食性を獲得してきました。たとえば中国のツパイは辛党です。辛味を愛する動物は他にヒトだけ。自然界では、辛いものを食べることが極めて珍しいのです。

植物の中には、動物に食べられないよう対策するものがあります。その一つが辛味を含むこと。辛味はつまり痛みですから、動物には毛嫌いされる感覚です。ケガや病気になっては、生存が危ぶまれます。それを彷彿させる痛みからは、本能的に距離を取りたくなるのでしょうね。

ところがツパイは辛いものを好んで食べています。厳密には辛党というわけではないのですが。というのも、ツパイはカプサイシン(痛覚を刺激する物質)を感じる力が弱く、辛味を感じていないだけなのです。

他の動物が食べられないものを平然と食べる。辛味を克服することで、ツパイの食糧事情は豊かになりました。


ツパイの食探求は続きます。次はマレーシアのツパイを見てみましょう。こちらは発酵したヤシの蜜を好んで口に含みます。この発酵、実はアルコール発酵なんですよね。つまりツパイは毎日、お酒をたしなんでいるのです。

アルコール度数は最大3.8%ほど。大したことなく思えるでしょうが、自然界では驚異的な数値です。もしこのヤシ酒をチンパンジーが飲めば、目を回して木から落ちることでしょう。にもかかわらず、ツパイは平気な顔でヤシ酒を飲み続けます。これは強力なアルコール分解能力を備えているおかげ。いくら飲んでも酔わない体質なのです。人間換算すると、ビール大瓶8本分のアルコールを毎日飲むようなもの。これほどの酒豪動物、自然界では他に見つかりません。


ラフレシアの種を食べる動物もツパイだけ。「死者の花」と呼ばれるだけあって、ラフレシアの放つ腐臭は凶悪です。昆虫にとっては大好物のニオイですが、動物にとっては悪臭でしかありません。そんなラフレシアに好き好んで近づく動物−ツパイは、相当なもの好きですよね。納豆やクサヤといった「ニオイは最悪、味は最高」の食べ物を好む人間としては、ツパイが発揮する食の探求心に、なんだか親近感を覚えてしまいます。



・人間とおそろい キレイ好き

人間に劣らぬ食探求を見せるツパイ。キレイ好きという面でも、人間ソックリだと感じます。果実やナッツをキレイに食べたかと思えば、食べカスを手で取り除き、口元と指を舐めて清潔を保つ。まあ、これ自体は珍しい習性ではありません。

これに加え、ツパイは大の風呂好きなのです。水場で汚れを落とし、毛皮の手入れを怠りません。その甲斐あって、ツパイの毛はいつもツヤツヤでサラサラなのです。

46155078852_25de52dfe2_c.jpgPhoto by -Paul Korecky-2017-10-01 AT Wien 13 Hietzing, Tiergarten Schönbrunn, Tupaia belangeri
しっかり掴んでパクリ。器用ですね。


そして一番のキレイ好きポイントは、トイレを使用する動物だということ。ツボ型の食虫植物に登り、そこで用を足すのです。ちなみにツパイは食虫植物が出す蜜も大好物。用を足すついでに、おやつも楽しんでしまいます。食虫植物からすれば、昆虫を誘うための蜜を奪われ、あげく獲物ではなく排せつ物を喰わされる・・・ちょっと可哀想ですね。

なんにせよ、ツパイも人間と同じように、風呂やトイレを利用するキレイ好きな動物ということ。親近感、湧いてこないでしょうか?



・ネズミ?サル?論争

ツパイ(tupai)には、マレーシア語で“リス”の意味があります。英語ではトガリネズミ(モグラみたいなネズミ)と呼ばれていますし、日本でも昔はキネズミと呼んでいました。たしかに見た目から連想すると、ネズミの仲間にしか思えませんよね。

ところが前述してきた通り、ツパイは人間臭い習性をたくさん備えています。それを考えると、「霊長類の仲間では?」という疑問も拭えません。実際ツパイは、頭の大きさに対して脳が大きい、というサルの特徴を持ち合わせています。なわばり意識がゆるく、食料豊富であれば侵入者を気にしない寛容さも、仲間を意識するサル寄りの特性でしょう。もしネズミであれば、侵入者へ容赦なく攻撃を加え、時には死へ至らしめますから。

ではツパイは霊長類なのかと問われると、それも難しい。というのも、育児方式があまりに独特なのです。ツパイは乾燥したはっぱを集めて巣穴をつくり、そこで出産します。妊娠期間は50日ほど。最大3匹出産。これだけ聞けば、早産多産のネズミではなく、サルに近いよう感じますね。ところがツパイ、育児をほとんど行わない動物なのです。育児にかける時間は1日たったの数分。乳を与えるだけで、他の時間は自分のエサ探しに費やします。育児に力を注ぐサルと比べると、育児放棄も同然の子育てスタイルです。

放置されては敵いません。ツパイの子供たちは、生後1月で巣を去り自立していきます。そして性成熟を迎えると、年間にわたり繁殖を始めるのです。独り立ちの早さもサルにはない特徴でしょう。

結局ツパイはネズミともサルとも言えず、独自の“ツパイ目“であるとの結論に落ち着きます。ちなみにサルの特性とネズミの繁殖力を兼ねる動物として、ツパイは臨床実験の場で活躍していたりします。たとえば霊長類への実験を肩代わりするのです。視覚実験や心理ストレスーある程度、精神活動を期待できる動物へ行う実験を、ツパイもこなせるのです。アルコール耐性を持つことも、肝炎などアルコール関連の研究へ重宝しますね。お酒に悩む人にとって、ツパイが救世主となる日が来る・・・かもしれません。
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